それでも僕は映画を見る〜ヤマシンの映画ブログ〜

映画の感想を書くことを生き甲斐とした男のブログでございます。

『ソロモンの偽証 前篇・事件』(2015)・『ソロモンの偽証 後篇・裁判』(2015)

『ソロモンの偽証 前篇・事件』(2015)・『ソロモンの偽証 後篇・裁判』(2015)

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⁡監督:成島出

出演:藤野涼子、板垣端生、石井杏奈清水尋也富田望生前田航基佐々木蔵之介夏川結衣永作博美黒木華、他

配給:松竹

ー概要ー

直木賞ほか多数の文学賞を受賞するベストセラー作家の宮部みゆきが、「小説新潮」で9年間にわたり連載したミステリー巨編「ソロモンの偽証」を、「八日目の蝉」の成島出監督が映画化した2部作の前編。バブル経済が終焉を迎えつつあった1990年12月25日のクリスマスの朝、城東第三中学校の校庭で2年A組の男子生徒・柏木卓也が屋上から転落死した遺体となって発見される。警察は自殺と断定するが、さまざまな疑惑や推測が飛び交い、やがて札付きの不良生徒として知られる大出俊次を名指しした殺人の告発状が届き、事態は混沌としていく。遺体の第一発見者で2年A組のクラス委員を務めていた藤野涼子は、柏木の小学校時代の友人という他校生・神原和彦らの協力を得て、自分たちの手で真実をつかもうと学校内裁判の開廷を決意する。物語の中心となる12人をはじめとした中学生キャストは、1万人の応募があったオーディションで選出。藤野涼子役の新人女優・藤野涼子は、本作での役名をそのまま芸名に女優デビューを飾った。

映画.comより

ー感想ー

翌年『クリーピー〜』にて西野(香川照之)に拉致・監禁・半洗脳されることになる14歳の藤野涼子が、仲間と共にまっすぐな瞳で自殺の真相解明に全力前進。

その姿から「救い」を映し出す、長編ミステリー!(後篇長め)

 

前篇、映画だと『64 ロクヨン』以来、その他だと2021年大晦日RIZIN以来となる「後篇早く見たい感」を堪能。

面白かった〜!

TVドラマとくっきり線を引いたアナモフィックレンズによる質感。

ふんだんに盛り込まれた雪や桜の季節感が「生」の実感を湧かす。

映画を見ている幸せに包まれました。

本作で学校という場所はロマンチックな側面を見せず、怨念が集まる代表的な「負の場所」として描かれる『呪術廻戦』同様、負の側面を見せる。

その学校の中で飲み込まれることなく自らを律し、絶対的な存在である大人に屈さず、学内裁判という形で信念を貫く藤野涼子

『湯を沸かす〜』で杉咲花演じたイジメに打ち勝つ安澄の数年後を見ているかのような気分に。

セリフを言ってから、人が帰ってから、など、ピロートークのように「〜してから」の表情を長々と映し続ける贅沢なクローズアップによって素材の印象が確実に脳へと刻まれていく。

真相解明の楽しみ、展開への驚き、シンプルにゾクっとさせる瞬間もたっぷりとあって、真相に近づきながら人間の感情を汲み取っていく。

まさにミステリー+映画。

 

一方で後篇、藤野涼子率いる学生たちが体育館に止まってからか、おっと映画の足取りが重くなり、長さが気になり出す。

中学生を軸にしたドラマゆえの軽いフットワークの部分が画面から消え、代わりに始まる「チキチキ全力泣き顔選手権」。

ソースのように味付けする演出。

胃がもたれてしまいました。

『怒り』の豪華役者陣による演技バトルを遥かに超える人間の数。

「1つのドラマ:泣く人間の数」の割合が完全に崩壊。

莫大な予算で映画のためだけに建設された後篇の体育館で、何百人という人間が参加して行われた裁判シーン。

大勢が集まると制御が効かなくなる人間の行動心理が作用しているように見えてしまった気がします。

 

藤野涼子の信念が憑依している今、後篇のひっかかった部分にも言及しましたが、ここまで力の入った日本映画を拝めることはやっぱり嬉しい。

全篇ひっくるめて賞賛したいところ!

ー満足度ー

前篇80%(100%中)

後編60%(100%中)