それでも僕は映画を見る〜ヤマシンの映画ブログ〜

映画の感想を書くことを生き甲斐とした男のブログでございます。

『セッション』(2015)

『セッション』(2015)

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監督:デイミアン・チャゼル

出演:マイルズ・テラーJ・K・シモンズ、メリッサ・ブノワ、ポール・ライザー、オースティン・ストウェル、ネイト・ラング、他

配給:ギャガ

 

ー概要ー

2014年・第30回サンダンス映画祭のグランプリ&観客賞受賞を皮切りに世界各国の映画祭で注目を集め、第87回アカデミー賞では助演男優賞ほか計3部門を受賞したオリジナル作品。世界的ジャズドラマーを目指して名門音楽学校に入学したニーマンは、伝説の教師と言われるフレッチャーの指導を受けることに。しかし、常に完璧を求めるフレッチャーは容赦ない罵声を浴びせ、レッスンは次第に狂気に満ちていく。「スパイダーマン」シリーズなどで知られるベテラン俳優のJ・K・シモンズフレッチャーを怪演し、アカデミー賞ほか数々の映画賞で助演男優賞を受賞。監督は、これまでに「グランドピアノ 狙われた黒鍵」「ラスト・エクソシズム2 悪魔の寵愛」などの脚本を担当し、弱冠28歳で長編監督2作目となる本作を手がけたデイミアン・チャゼル

映画.comより

ー感想ー

鬼教官(才能あり)とジャズドラマー(才能あり)のセッションによって教育の臨界点をあぶり出す!

人格否定、暴力は当たり前、YOSHIKIもタジタジ、音楽映画なのか、バイオレンス映画なのか、格闘技の試合を見てるのか。。

 

見る者全員が画面の前で挫折を味わうことになる教師フレッチャーの独裁指導。

完璧な音楽を生み出すこと以外は徹底的に排除する姿勢。

それは先日見た『クレしん嵐を呼ぶジャングル』の世を支配しようとするアフロマッチョ「パラダイスキング」と何ら変わらない。

しかし恐ろしいことに指導を受けるニーマンは「パラダイスキング」に支配される「ただ普通に暮らしたい」と願うひろしやみさえたちとは異なり「一流のドラマーになりたい」と願って自らテリトリーに入り込んでいるため、反抗の余地はほぼない。

これが何とも恐ろしい。。

名バイプレイヤーの「バイ」の部分はどこへ行ったのか、額の血管が切れそうなほど怒鳴り散らし、身内の誰かを殺されたのかと思うほど怒り狂うJ・K・シモンズ演じる鬼教官フレッチャーは、生徒のニーマンを「続けるか辞めるか」だけの世界に閉じ込める。

ニーマンは「ケツだけ歩き大行進」ではなく「自分のドラムスキルを磨くこと」をささやかな反抗とするが、まんまとフレッチャーの思惑通りにドラムを叩いていく。

確実に人を成長させる行き過ぎた教育。

実際の激しい演奏、スピーディーなカット割り、多彩なアングルでその教育の過程をリアルにリズミカルに描き出す。

 

⁡大学の卒業制作で白黒ミュージカルを撮っただけという異例の経歴で、本作にて長編&商業映画デビュー&アカデミー賞3部門受賞を果たしたデイミアン・チャゼル

自身の高校時代の経験を基にわずか19日間の撮影で制作された本作は、生々しさとリズムを全編に冴え渡らせていました。

監督は「音楽の辛さや恐怖を描きたかった」とおっしゃてるように、本作は「青春」「協調性」を無くし「個の努力」と「指導」の部分をトキントキンに尖らせまくった『スウィングガールズ』であり、鈴木友子(上野樹里)が挫折してしまうだろう厳しすぎるプロ同様の世界を監督自らの経験をもってリアルに描く。

その中で激しくもがくニーマンの肉体は、辛さと同時に充実も感じさせてしまうところが本作を見入ってしまった理由かもしれません。

 

⁡勝つか負けるかしかないレッスン教室上で鬼教官とドラムを使って戦う青年の姿はまさに新種の格闘家。。異色の傑作音楽映画の誕生を遅れて祝福です!!

 

ー満足度ー

85%(100%中)